実行:2014年3月
旅の序章:鉄路に刻む、消えゆく「青い流星」へのラストラン
2014年3月,ひとつの時代がひっそりと幕を下ろそうとしていた。東京と青森を結び続けたブルートレイン,寝台特急「あけぼの」。定期運行の廃止を直前に控え,青い客車の姿をその目に刻み,車内の匂いを肌で感じたいという衝動は抑えがたいものであった。
本旅の目的は単に「あけぼの」に乗車することだけではない。学生ならではの知恵と時間を行使し,「東京都区内~東京都区内」という片道一筆書きの学割乗車券を軸に,常磐線,水郡線,東北本線,そして秋田新幹線を乗り継いで東北を周遊する。
この記事では,ローカル線の魅力溢れる車窓,伊達政宗ゆかりの仙台観光,日本三景・松島の絶景,そして旅のハイライトである24系寝台特急「あけぼの」のB寝台体験をあますことなく記録した。費用やルートのノウハウもまとめているため,レール音に耳を澄ませる旅に出たい方の参考となれば幸いである。
この記事でわかること
- 学割乗車券と地域パスを活用したお得なルート設計
- 2日間の移動スケジュールと見どころ(水郡線、仙台城跡、松島、大崎八幡宮)
- ゲストハウス「梅鉢」と寝台特急「あけぼの」の宿泊・乗車体験
- 鉄道旅を快適にするおすすめガジェット・旅行グッズ
【1日目】東京から水郡線経由で仙台へ。東北本線を北上し独眼竜にご挨拶
朝靄の立ち込める早朝のJR上野駅。旅の起点としてこれほど相応しい場所はない。常磐線快速のE531系に乗り込み,水戸を目指して北上を開始する。交直流電車であるE531系の滑らかな加速に身を任せ,都市の街並みが次第に田園風景へと移り変わる様を眺める。
水戸駅に到着後,少し足を伸ばして千波湖を散策した。偕楽園に隣接するこの湖は,水戸藩主・徳川光圀公も愛したとされる癒やしの空間である。水面に反射する朝日を浴び,旅の無事を祈念する。

水戸からは,非電化路線の水郡線(奥久慈清流ライン)へ。キハE130形の気動車特有の力強いディーゼル音を響かせ,列車は奥久慈の山々へ踏み込んでいく。常陸大子駅では編成の一部切り離し作業が行われ,ローカル線ならではの悠久の時に触れる。郡山駅で東北本線へ接続し,701系,そしてE721系へと乗り継ぎながら,政宗公が拓いた城下町・仙台を目指した。

仙台駅到着後,市営バスに揺られて仙台城跡(青葉城址)へ向かう。高台にそびえる伊達政宗公の騎馬像の傍らに立つと,かつて城下に目を光らせた独眼竜の視線を追体験できるようだ。眼下に広がる仙台市街の景色は美しく,冷たい夕風が心地よい。
その後,仙山線と利府支線を巡り,東北本線の枝線構造を確かめるように鉄路の歴史に想いを馳せたのち,本日の宿へと向かった。
今回泊まったおすすめホテル:仙台の温かな隠れ家「ゲストハウス 梅鉢」
仙台での夜を彩る宿として選んだのは,苦竹エリアにある「ゲストハウス 梅鉢」である。
おすすめポイント
- 温かいコミュニティ空間: アットホームなリビングがあり,全国から集まる旅人や地元のゲストと旅の思い出を語り合える。
- リーズナブルな価格: 学生やバックパッカーに優しい手頃な宿泊料金設定。
- 手作りの温もり: 木の温もりを感じるインテリアと,丁寧に作られた食事が旅の疲れを解きほぐしてくれる。
正直に感じた注意点・デメリット
- アクセス: 苦竹駅から徒歩約8〜10分ほどあり,大きなスーツケースを持っての移動は少し骨が折れる。
- 静寂性の確保: ドミトリー(相部屋)形式が中心のため,他人の消灯時間や生活音に敏感な方は耳せんなどの対策が必要である。
お得な予約方法
仙台市内のゲストハウスや格安ホテルは,休日や観光シーズンになると即座に満室となる。楽天トラベルなどの旅行サイト経由で早めに枠を確保しておくことが鉄則だ。ポイント還元を活用すれば,実質的な旅費をさらに削ることが可能である。
【2日目】松島海岸の静寂,仙台の歴史巡り,そして秋田新幹線から夜行列車へ
2日目は苦竹駅から205系に乗車し,仙石線で高城町・松島海岸方面へ。東日本大震災の爪痕を残しながらも復興へと歩む沿線の線路を眺めつつ,日本三景の一つ・松島へ降り立った。
瑞巌寺の五大堂へと足を運ぶ。伊達政宗公が再建したとされる桃山建築の傑作であり,透かし橋を渡る際の足元の緊張感が心地よい。松島湾に浮かぶ幾多の島々を眺めていると,芭蕉が句を詠めなかったほどの美しさという伝承が真実味を帯びて感じられる。
仙台駅へ戻った後は,市営バスで国宝「大崎八幡宮」へ。社殿は豪華絢爛な桃山建築の遺構であり,漆黒の拝殿に施された極彩色の彫刻には目を奪われる。さらに,レトロな観光循環バス「るーぷる仙台」に揺られ,杜の都のシンボル・定禅寺通のケヤキ並木を散策。昼食には仙台名物の牛タンを堪能し,お腹も心も満たされた。
午後からは東北本線をさらに北上。一ノ関で701系に乗り換え,盛岡駅に到着する。盛岡からは,いよいよ秋田新幹線「スーパーこまち」のE6系に乗車だ。茜色の流線型フォルムが美しい最新鋭車両(当時)は,田沢湖線の単線区間を軽快に駆け抜け,奥羽山脈を越えて秋田へと滑り込んだ。
今回乗ったおすすめ列車:消えゆく昭和の情景「寝台特急あけぼの」
秋田駅のホームで待つことしばしば。21時過ぎ,薄暗がりの中から蒼い車体をくねらせて入線してきたのは,本旅のハイライトである24系「寝台特急あけぼの」である。
乗車して分かった魅力
- 圧倒的な情緒: 昭和の国鉄時代から受け継がれたB寝台の2段ベッド。「ガタン」という揺れとレール音が心地よい子守唄となる。
- 独特の車内空間: 青いモケットのベッド,折りたたみ式の梯子,コンパクトな洗面台。機能美とノスタルジーが同居している。
- 夜行移動の合理性: 移動時間そのものが「睡眠・宿泊時間」となり,時間を有効活用できる。
正直に感じた注意点・デメリット
- プラチナチケット化: 廃止直前のため指定席の入手が極めて困難(10時打ちなどの事前準備が不可欠であった)。
- 設備の違い: 最新の電車に比べるとコンセントの数が少なく,ガジェット類の充電にはモバイルバッテリーが必須となる。
チケット手配・ツアー予約のコツ
定期運行の寝台列車は姿を消しつつあるが,現在でも「サンライズ出雲・瀬戸」や各種観光列車,JR各社の魅力的なパッケージツアーが多数販売されている。ネット予約システム(JR九州の予約サイトやえきねっと等)を活用するか,旅行代理店の「国内鉄道ツアー特集」からスムーズに申し込むのがベストである。
【3日目】旅の終わり。朝靄の上野駅で余韻に浸る
夜が明ける頃,列車は関東平野を駆け抜けていた。減速のショックとともに目を覚ますと,窓の外には見慣れた東京都心の街並みが広がっている。
6時58分,定刻通り終点の上野駅13番線ホームに到着。漆黒の電気機関車EF64形が,役目を終えて静かに息を吐いていた。
ホームにはカメラを構える多くのファンが集まっていた。車掌と機関士が軽く釈放の挨拶を交わし,やがて「あけぼの」の回送列車がゆっくりと尾久車両センターへ去っていく。その青い客車が見えなくなるまで見送り,私の東北周遊・寝台特急の旅は静かに幕を閉じた。
今回の旅でかかった費用&事前準備・持ち物
学生向けにコストパフォーマンスを追求した今回の旅の費用内訳と,持参して本当に役に立った便利グッズをまとめた。
費用内訳(1人分)
| 項目 | 利用内容 | 費用(税込) |
| 交通費 | JR学割乗車券(東京都区内 ~ 東京都区内) | 11,510円 |
| 交通費 | 仙台まるごとパス | 2,600円 |
| 交通費 | スーパーこまち特急券(立席:盛岡~秋田) | 1,780円 |
| 交通費・宿泊費 | あけぼの特急券・B寝台券(秋田~上野) | 9,130円 |
| 宿泊費 | ゲストハウス 梅鉢(1泊) | 約3,000円 |
| 食費・観光費 | 昼食(牛タン)、観光施設入場料、雑費等 | 約6,000円 |
| 合計 | 約34,020円 |
持っていって良かった!おすすめ旅行アイテム
鉄道旅,特に夜行列車やローカル線の旅では以下のガジェットやグッズが威力を発揮する。
- 大容量モバイルバッテリー
古い型の客車やローカル線車両(701系など)には座席コンセントがない場合が多い。スマホのナビやカメラを多用する旅では必須アイテムである。 - 一眼レフ・ミラーレスカメラ
駅のホームの独特な空気感や流れる車窓を美しく切り取るには,やはりスマートフォン以上の描写力を持つカメラが欲しい。 - 軽量キャリーケース(またはバックパック)
乗り換えが多い一筆書きの旅では,取り回しの良い機内持ち込みサイズのスーツケースが重宝する。
終わりに:レールは次の旅へと続いている
一筆書きの乗車券と,少しの好奇心。それさえあれば,誰もが日常を抜け出し,まだ見ぬ風景と出会うことができる。かつて走っていた「あけぼの」は歴史の1ページとなったが,日本全国にはまだ見ぬ魅力的なローカル線や,夜を徹して走る「サンライズエクスプレス」などの魅力的な列車が走り続けている。
「いつか行きたい」と思っている時間はもったいない。次の週末,あなたも切符を握りしめて鉄路の旅へ飛び出してみてはいかがだろうか。








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