実行:2013年7-8月
10,000円の切符を握りしめ,北へ:高校生が挑んだ3泊4日の鉄路旅
高校生になり,初めて自分で計画を立てて挑んだ旅。ポケットに忍ばせたのは,JR東日本とJR北海道の普通列車が7日間乗り放題となる「北海道&東日本パス」(当時10,000円)である。
青春18きっぷとは異なり,青い森鉄道などの第三セクター線や特定区間の特急券加算による特急利用が認められている点が,この切符最大の強みであった。青函トンネルを抜け,廃止間近の江差線や国鉄型車両の残影を追いかけるように日本海を北上する。本記事では,2013年夏の記憶をもとに,旅費を最小限に抑えつつ北日本を縦断する魅惑のルートと実用的なノウハウを記録する。
この記事でわかること
- 「北海道&東日本パス」を駆使した最短かつ情緒あふれる北上ルート
- 485系や115系など,今や貴重となった国鉄型車両や連絡船の歴史的記録
- 3泊4日の全費用内訳と,格安旅行を快適にするための事前準備
【1日目】旧型国鉄車と北陸の鉄路を乗り継ぎ,新潟フェリーターミナルへ
雲が低く垂れ込める早朝の関東。大宮駅から高崎線E231系に乗り込み,高崎を目指すことから旅は始まった。
高崎駅に到着。ホームに滑り込んできたのは,懐かしい湘南色の115系電車であった。モーター音を響かせながら上越線を北上し,水上駅へ。ここから115系に乗り換え,越後山脈の懐深くに位置する「日本一のモグラ駅」土合駅を目指す。
土合駅着。地底ホームから改札口へと続く462段の階段を見上げ,思わず息をのむ。湿り気を帯びたひんやりとした空気が肌を撫でる中,一歩ずつ階段を上り詰め,木造の駅舎を散策した。

再び水上駅へ折り返し,駅前のSL転車台広場を散策後,旧新潟色の115系で越後湯沢駅へ向かう。12時に到着した越後湯沢駅では,駅構内で昼食のそばを啜りつつ,ホームで北陸新幹線開業前の主役・681系特急「はくたか」の雄姿をカメラに収めた。
越後湯沢を出発。ほくほく線直通の六日町,まつだいと乗り継ぐ。まつだい駅前では現代アートの展示を短時間見学し,直江津駅へ。

直江津からは115系で脇野田駅(現在の妙高はねウマライン上越妙高駅)へ到着した。ここには古き良き木造駅舎が残されていたが,すぐ脇には真新しい北陸新幹線の巨大な高架橋がそびえ立ち,新旧の対比が時代の移り変わりを静かに物語っていた。

脇野田からは国鉄特急型の485系で運行される「快速くびき野」に揺られ,新潟駅へ到着。駅前で夕食を済ませ,路線バスで新潟港フェリーターミナルへと向かった。21時にターミナルへ到着し,乗船手続きを行う。深夜,新日本海フェリー「あざれあ」は静かに夜の日本海へと滑り出した。

旅情と安らぎが交差する洋上の宿「新日本海フェリー あざれあ」
深夜便のフェリーは,単なる移動手段を超えた絶好の宿泊施設である。学割を適用した「ツーリストB」の運賃はわずか3,840円。カプセルホテルのような機能的な区画でありながら,プライバシーはしっかりと確保されていた。

おすすめポイント
- 洋上での入浴体験:大浴場からは夜の日本海が一望でき,船の揺れを感じながら浸かる湯は格別である。
- 圧倒的なコスパ:移動費用と宿泊費用を同時に賄えるため,格安旅の強い味方となる。
正直な注意点・デメリット
- 新潟港ターミナルまでのアクセス路線バスが本数が限られているため,時刻の事前確認が必須である。
- 海況によっては相応の揺れが生じるため,酔い止め薬の常備を強く推奨する。
予約のコツ
新日本海フェリーをはじめとする長距離フェリーは,夏休みなどの繁盛期には早期に枠が埋まる。楽天トラベルなどの各種予約プラットフォームを活用し,乗船日の2ヶ月前の発売開始直後に押さえておくのが確実である。
【2日目】特急白鳥で津軽を渡り,念願の函館へ
早朝6時前,秋田港に寄港。土崎駅から奥羽本線で秋田駅へ移動し,秋田市民市場で新鮮な海鮮丼の朝食をとる。
秋田駅を出発。乗車するのは485系を改造した観光列車「快速リゾートしらかみ1号(橅編成)」である。しばらくするとバスケットボールの街・能代駅に到着し,ホームでのフリースロー体験に興じる。深浦駅でHB-E300系「青池編成」と列車交換を行い,列車が進むと車内で津軽三味線の生演奏が始まった。力強い弦の音が車内に響き渡り,旅情は最高潮に達する。
しかし,長旅の疲れが出たのか,演奏が終わると激しい眠気に襲われた。青森駅到着の案内放送にも気づかず深い眠りについていたところ,車掌に肩を叩かれて目覚める始末であった。
青森では「青函連絡船メモリアルシップ八甲田丸」を見学。昭和の面影を残す車両甲板や操縦室に感銘を受けた後,「帆立小屋」で自ら釣り上げた帆立を焼き立てで味わった。
青森駅から485系「特急白鳥23号」に乗車する。北海道&東日本パスの特例(当時)を利用し,青函トンネルをくぐり抜ける。車窓からは,間もなく開業を迎える北海道新幹線の高架橋や竜飛海底駅の明かりが瞬く間に過ぎ去っていった。
ついに北海道・函館駅に降り立つ。ご当地ハンバーガー店「ラッキーピエロ 本町店」で名物のチャイニーズチキンハンバーガーを堪能。その後路面電車で湯の川温泉へ向かい,「ホテル雨宮館」の源泉掛け流しの湯で長旅の疲れを癒やした。再び函館駅へ戻り,夜の静寂に佇む寝台特急「北斗星」の雄姿を見送って2日目を締めくくった。
函館の夜を彩るライダーハウス風の宿「フェローハウス」
函館での宿は,旅人たちの交流の場としても知られる「フェローハウス」を選択した。アットホームな雰囲気と手頃な価格帯が魅力のゲストハウスである。
おすすめポイント
- 圧倒的な安さ:素泊まり数千円という価格設定は,学生の貧乏旅にとって非常にありがたい。
- 旅人同士の交流:ライダールームや共有スペースでは,全国から集まった旅行者と貴重な情報交換ができる。
正直な注意点・デメリット
- 相部屋(ドミトリー)形式が基本となるため,プライベートな空間を最優先したい人には不向きかもしれない。
- 設備はシンプルであり,アメニティ類は持参する必要がある。
予約のコツ
函館市内の格安宿は夏休みのピーク時にすぐ満室となる。国内旅行のポータルサイトで早めに検索・比較し,プランを確定させておくのが鉄則である。
【3日目】ノスタルジックな函館街歩きと江差線の面影を訪ねて
3日目も曇り空の下,早朝に市電で函館朝市へ向かい,活気あふれる市場で朝食をとった。
続いて五稜郭公園を訪れ,五稜郭タワーの展望台へ。眼下に広がる完璧な星形の城郭景観に感嘆する。市電で末広町へ移動し,基坂を上って旧函館区公会堂の気品ある西洋建築を鑑賞。その後,定番の八幡坂から港を見下ろす美しい坂道を下った。
北海道鉄道博物館を訪れ,昼食は「ラーメン 滋養軒」にて透明感のある透き通ったスープの函館塩ラーメンに舌鼓を打つ。
13時,函館駅からキハ40系気動車に乗り込み木古内駅へ。ここから2014年に廃止が決定している江差線のローカル区間へと踏み込む。16時江差駅へ到着。歴史ある港町の風情を感じながら駅前を散策した。
再び木古内駅へ戻る。新幹線開業に向けた工事が進む構内を見学した後,789系「特急スーパー白鳥42号」で津軽海峡を逆戻りする。蟹田駅で普通列車に乗り換え,青森駅へ。ここから青い森鉄道の701系で八戸駅へ到着し,路線バスで本日の宿へと向かった。
八戸の夜を支えるビジネスの拠点「パンション弁慶」
八戸での宿は,ビジネスや長期滞在者に親しまれている「パンション弁慶」を利用した。
おすすめポイント
- 家庭的な温かさ:リーズナブルな価格設定ながら,清潔感のある部屋と親切な接客が心地よい。
- 周辺アクセスの良さ:八戸市街地や港エリアへのアクセスが良く,翌朝の市場散策にも好立地である。
正直な注意点・デメリット
- 八戸駅から距離があるため,バスやタクシーの利用が前提となる。
- 建物自体は少し年数が経っているため,最新鋭の設備を求める人には好みが分かれる。
予約のコツ
地方のビジネスホテルやパンションは,出張客や観光客で埋まりやすい。楽天トラベル等のホテル予約サイトを利用し,早めのオンライン決済で割引特典を獲得するのが賢明である。
【4日目】東北本線を南下。歴史と旅の終わりを噛みしめて
最終日,早朝に八戸市魚菜小売市場を訪れ,名物の「のっけ丼」スタイルの朝食を楽しむ。陸奥湊駅からキハ40系で八戸駅へ移動。
7時,八戸駅から青い森鉄道色の701系に乗り込み,旧東北本線の美しい車窓を眺めながら盛岡駅へ到着した。
盛岡からは,485系を再改造したジョイフルトレイン「快速ジパング平泉2号」に乗車。9:43に出発し,10:48に世界遺産の街・平泉駅へ到着した。路線バスで中尊寺へ向かい,金色堂をはじめとする奥州藤原氏の歴史的遺構を見学。至近の平泉レストハウスで名物の前沢牛ラーメンの昼食をとった。
13時,平泉駅から701系で一ノ関へ。14時に一ノ関を出発し,16時に仙台駅へ到着。E721系の快速列車で福島へ向かい,17:30に福島着。さらに719系に乗り換えて19:30に黒磯駅へ到着した。
20:30,宇都宮駅に到着。ホームでしばし待機し,札幌を目指して北上する下り寝台特急「北斗星」の通過を見送った。旅の最後に見たブルーの客車は,哀愁を帯びて闇の中に消えていった。そのまま宇都宮線経由で大宮へと戻り,3泊4日にわたる北日本縦断の長旅は幕を閉じた。
旅の費用&事前準備・おすすめガジェット
今回の3泊4日の旅でかかった費用と,快適な鉄道旅を実現するための準備品をまとめた。
費用内訳一覧
| 項目 | 内容・詳細 | 費用(税込) |
| 交通費 | 北海道&東日本パス | 10,000円 |
| 交通費 | 新日本海フェリー(ツーリストB・学割) | 3,840円 |
| 交通費 | 函館市電1日乗車券 ほか現地交通 | 約2,000円 |
| 宿泊費 | フェローハウス、パンション弁慶(計2泊) | 約6,500円 |
| 食費 | 朝市海鮮、ラッキーピエロ、ラーメン等 | 約9,000円 |
| 合計 | 3泊4日 北日本縦断旅 | 約31,340円 |
持参して本当によかった厳選アイテム
- 大容量モバイルバッテリー
長時間列車に乗る普通列車の旅では,コンセントがない車両も多い。スマートフォンでの情報収集やカメラの充電には大容量バッテリーが不可欠である。 - 一眼レフ・ミラーレスカメラ
消えゆく国鉄型車両や旅先の美しい景色を記録するには,スマホ以上の描画力を持つカメラが欲しい。旅の思い出を一生モノの品質で残すことができる。 - 機動性の高い軽量スーツケース・バックパック
駅の階段移動や乗り換えが多い鉄路の旅では,軽量かつ頑丈なキャリーケースや大容量バックパックが威力を発揮する。
お得な旅の手配
航空券やJRパッケージツアー,ホテル予約は事前のネット予約が最もスムーズで確実である。楽天トラベル等のポータルサイトを活用し,ポイントを還元させつつお得に旅の準備を進めよう。
おわりに:10,000円の切符が教えてくれた,世界の広さ
普通列車を乗り継ぎ,フェリーで海を渡る旅は,決して効率が良いとは言えない。しかし,車窓から流れる景色のグラデーション,各地の駅で出会う人々の温もり,そして自らの足で北の大地を踏みしめた時の感動は,ファスト旅では決して得られない貴重な財産となる。
「北海道&東日本パス」という1枚の切符があれば,あなたの目の前にはどこまでも続く鉄路と広大な世界が広がっている。日常を抜け出し,まだ見ぬ景色を探す旅へ今すぐ出かけてみませんか。
旅の第一歩を踏み出そう
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