乗車:2014年3月
旅の序章:夜の闇を越えて首都圏へ,青き客車が紡ぐラストラン
夜の静寂が包み込む秋田駅のホームに,青い塗装を纏った24系客車が静かに姿を現す。かつて日本全国の夜空の下を駆け巡り,多くの旅人の夢を乗せて走った「ブルートレイン」。その歴史の掉尾を飾る定期寝台特急こそが,青森と上野を結ぶ「あけぼの」である。
頭上に掲げられたトレードマークのヘッドマーク,機関車が吐き出す独特の排気音とジョイント音,そして車内に流れる哀愁漂うハイケンスのセレナーデ。ただの移動手段ではなく,目的地へ向かう夜そのものが壮大な旅のクライマックスへと変わる瞬間が,ここには存在する。
2014年3月のダイヤ改正をもって定期運行終了が決まり,引退の時が迫る中で筆者が決行した秋田〜上野間の「あけぼの」乗車旅。伝説の寝台特急の姿,24系B寝台での過ごし方,そして乗車手順からリアルな注意点までを,溢れる情熱とともに書き残しておきたい。
この記事でわかること
- 寝台特急あけぼの(24系客車)の基本情報・特急料金・運行スケジュール
- EF81形・EF64形機関車のリレーと奥羽本線・羽越本線・高崎線を辿るルート
- B寝台(開放型・ソロ)の車内設備・過ごし方・おすすめの座席(寝台)
- 争奪戦となるプレミアチケットの予約方法と車内での注意点
寝台特急あけぼのの基本情報(料金・所要時間・ルート)
「あけぼの」は,青森発着で日本海側の奥羽本線・羽越本線・信越本線・上越線・高崎線・東北本線を経由して上野へと至る長距離寝台特急である。
運賃・料金表(秋田駅 ~ 上野駅 / 2014年3月乗車当時基準)
| 設備・席種 | 運賃+特急料金+寝台料金(片道・大人) | 備考 |
| B寝台(開放型) | 15,000円前後 | 上下2段組の伝統的な開放型寝台 |
| B寝台個室「ソロ」 | 15,000円前後 | B寝台料金と同額で利用できる1人用個室 |
| A寝台個室「シングルデラックス」 | 21,000円前後 | 洗面台等を備えた最上級個室 |
| ゴロンとシート(普通車指定席) | 9,500円前後 | 寝具なし・指定席特急料金のみで寝台を利用可能 |
※乗車券に学割などを適用させることで,運賃部分をさらに抑えることが可能であった。
所要時間と主な停車駅スケジュール(秋田〜上野間)
- 秋田駅発: 21:23発(あけぼの 上野行き)
- 主な停車駅: 羽後本荘,酒田,鶴岡,新津(運転停車),長岡(機関車交換),高崎,大宮
- 上野駅着: 翌朝 06:58着
- 所要時間: 秋田〜上野間でおよそ9時間35分の夜行旅である。
安く乗る方法・お得なチケットの情報
「あけぼの」には,寝台料金(通常6,480円)を浮かせられる名物設備「ゴロンとシート」が連結されていた。浴衣やシーツ,枕といった寝具の提供はないものの,B寝台と同じベッドスペースを普通車指定席特急料金のみで利用できるため,若者や学生旅で絶大な人気を誇った。
チケットの予約・購入方法(いつから? どこで買える?)
定期運行終了が近づく24系「あけぼの」のチケットは,全国の鉄道ファンや旅行者による激しい争奪戦が繰り広げられた。
予約のタイミングと手順
- 予約開始日: 乗車日の1ヶ月前の午前10時から,全国のJR駅「みどりの窓口」および「話せる指定席券売機」,旅窓口で一斉に発売された。
- 10時打ちの重要性: 特に1人用個室「ソロ」や「ゴロンとシート」は数が限られており,発売開始10分前の窓口並び(いわゆる10時打ち)を行わなければ入手は極めて困難であった。
予約が取りにくい場合のコツ
開放型B寝台は,直前のキャンセルや戻り分が「えきねっと」等の指定席照会システムへ反映されるケースがある。諦めずに乗車数日前まで窓口やネットで空席照会を続けることが,プレミアチケットを手にする近道であった。
車内設備と快適な過ごし方
青い塗料の匂いと独特の重厚感が漂う24系客車の車内は,昭和の国鉄時代から受け継がれた旅情の結晶である。
車内設備一覧
- B寝台(開放型): 通路を挟んで片側に2段組の寝台(ベッド)が向かい合わせで並ぶ。幅約70cmのベッドにはシーツ,毛布,枕,浴衣が備え付けられている。カーテンを閉めればプライベートな空間が保たれる。
- コンセント・Wi-Fi: 現代の車両とは異なり,各寝台にコンセントの設置はない(廊下の洗面台付近にのみ一部存在)。モバイルバッテリーの持参が必須である。
- トイレ・洗面所: 各号車のデッキ部分に和式・洋式トイレおよびレトロなステンレス製洗面台が設置されている。
- シャワー室・売店: 「あけぼの」にはシャワー室や食堂車,車内販売の営業はない。
おすすめの座席(寝台):下段寝台を指定すべし!
B寝台(開放型)で快適性を追求するなら,絶対に「下段(1列につき1番・3番などの下段席)」を指定すべきである。
下段は窓を独占できるため,ベッドに横たわりながら夜の街明かりや流れる星空をじっくり眺めることができる。また,上段のように高い梯子を上り下りする必要がなく,天井高にもゆとりがあるため圧迫感が少ない。
持ち込むべきおすすめアイテム
- テイクアウトの夜食とドリンク: 車内販売や自動販売機(ジュース類のみ)の選択肢が少ないため,秋田駅乗車前に駅弁や温かい飲み物,アルコール類を買い込んでおくのが夜行列車を愉しむ鉄則である。
- モバイルバッテリー: 前述の通り寝台にはコンセントがないため,スマートフォンの充電用に大容量バッテリーが欠かせない。
実際乗ってみてわかった注意点・デメリット
ノスタルジーに浸れるブルートレインだが,客車列車特有の振動や設備面での注意点もあらかじめ理解しておく必要がある。
注意点1:機関車の付け替えと「揺れ・衝撃」
あけぼのの大きな魅力であり注意点でもあるのが,途中駅での「機関車交換」である。青森〜長岡間は交直両用電気機関車EF81形が牽引し,長岡駅で直流電気機関車EF64形へとバトンタッチされる。
深夜の長岡駅などで機関車を連結・解放する際,「ガチャン!」という大きな衝撃と金属音が車内に響き渡る。客車特有のゆったりとした縦揺れと相まって,眠りが浅い人は目を覚ましてしまうことがある。
注意点2:防音性とプライバシー
開放型B寝台は厚手のカーテン一枚で廊下と仕切られているため,隣の区画の話し声やイビキ,足音がダイレクトに聴こえる。静寂の中で眠りたい方は耳栓やアイマスクを持参されたい。
注意点3:悪天候や雪による遅延
日本海側の羽越本線や,雪深い上越越え(清水トンネル区間)を夜間に走破するため,冬場や春先は強風やドカ雪による遅延が発生しやすい。翌朝の予定には十分なタイムスケジュールを持たせておくことが肝要である。
到着後のアクセス・併せて使いたいサービス
翌朝6時58分。朝日が差し込む上野駅の13番線ホーム(通称:地平ホーム)へ,「あけぼの」は滑り込む。かつて東北・北陸からの夜行列車を受け止め続けた歴史あるホームで降り立つ瞬間は,感無量の面持ちとなる。
- 到着後の二次交通: 上野駅からは山手線や京浜東北線,東京メトロ銀座線・日比谷線,さらには各新幹線への接続が抜群である。
- 朝食やリフレッシュ: 上野駅構内や周辺には早朝から営業しているカフェやサウナ・銭湯があり,長旅の汗を流して身支度を整えることができる。
- 都内観光・次の目的地へ: 東京観光へ繰り出すなら,都営地下鉄や東京メトロのフリー切符やレンタカーの事前予約を活用すると移動がスムーズである。
まとめ&あわせて読みたい記事
24系寝台特急「あけぼの」。それは単に北陸・東北と首都圏を結ぶ列車という存在を超えて,大勢の旅人や帰省客の想いを乗せ,夜の暗闇をひた走ってきた昭和・平成の動く歴史遺産であった。
レールが奏でるガタゴトという子守唄を聞きながら,小さな窓の外の闇を見つめたあの夜の記憶は,時代が変わっても色あせることはない。
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この「あけぼの」B寝台への乗車は,2014年3月に完遂した「東北一筆書きの旅」のグランドフィナーレを飾る一幕でした。水郡線から始まり,仙台,松島,大崎八幡宮,定禅寺通,るーぷる仙台,そして秋田新幹線E6系「スーパーこまち」を経てブルートレインへと至る全体のモデルコース・費用内訳・スケジュールについては,ぜひ以下の記事をご覧ください。








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