実行:2015年3月
鉄路は西へ:青春18きっぷと四国フリーきっぷで紡ぐ贅沢な格安旅
鉄路を渡る風には,どこか旅人を狂わせる香調が含まれている。日常から逃避し,車窓の風景を肴に未知の街を目指す旅。本記事では「青春18きっぷ」と学生の特権である「学生限定春休み四国フリーきっぷ」を組み合わせ,東海道を西下して瀬戸内海を渡り,四国を周遊する3泊4日の鉄路紀行を記録する。
この記事でわかること
- 見どころ:東海道本線の乗り継ぎ旅,ジャンボフェリーでの夜行航海,松山・高知の歴史散策と極上グルメ
- 費用感:交通費・宿泊費合わせて約3万円の学生向け低予算モデル
- スケジュール:東京発・3泊4日で四国主要都市を効率よく巡るタイムライン
【1日目】霧雨の東海道を西へ:東京から神戸・新長田への長い道程
霧雨に濡れる早朝の新宿駅。始発に近い7時の列車に乗り込み,熱海を目指す。車窓を流れる街並みは徐々に濡れた緑へと移り変わり,9時30分には熱海駅へと滑り込んだ。ホームの対岸には,伊豆急行の「黒船電車」が漆黒の車体を光らせて鎮座していた。
興津で211系の始発列車に乗り換え,浜松へ。13時,空腹を覚えて降り立った浜松駅では「五味八珍」の暖簾をくぐる。香ばしく焼き上げられた浜松餃子は,もやしと共に食すことであっばりと胃に収まった。豊橋で路面電車を眺めた後,313系快速で米原,さらに223系新快速で京都,大阪へと西下を続ける。大阪駅の環状線ホームでは,引退の足音が聞こえる朱色の201系電車が鈍い金属音を立てて滑り込んできた。
神戸経由で新長田へ辿り着いたのは21時。お好み焼きの老舗「青森」で,香ばしいソースの焦げた匂いとともに味わう「かめそば」は,長旅の疲れを優しく解きほぐしてくれる。深夜の三ノ宮駅から港へ向け,夜の静寂を踏みしめて歩いた。
深夜の瀬戸内を往く「ジャンボフェリー」の情景
深夜1時,三宮新港から乗船したジャンボフェリーは,単なる移動手段を超えた情緒を漂わせている。甲板に立つと,神戸港の夜景が遠ざかり,冷たい夜風が頬を刺す。船内には雑雑とした温もりがあり,波揺れに身を任せて横たわる時間は,格安旅ならではの醍醐味である。

おすすめポイントと注意点
- おすすめ:横になって身体を休められる絨毯席があり,宿泊費を大幅に浮かせられる。
- 注意点:三宮駅から港までは徒歩で約20分と距離がある。深夜便は早めの確保が鉄則である。
旅の夜を快適に過ごすなら,事前のネット予約がスムーズだ。
【2日目】快晴の伊予路:道後温泉の湯けむりと松山城の天守
午前5時,高松東港に到着。早朝の澄んだ空気のなか栗林公園北口へ向かい,名店「さか枝」で早朝うどんをいただく。出汁の香りが身体に染み渡る。

特急うずしお,そして高松からは8000系特急いしづち1号に乗り換え,松山へ。「学生限定春休み四国フリーきっぷ」のおかげで特急列車の自由席も乗り放題である。大手町駅では,伊予鉄道の路面電車と郊外電車が平面で交差する全国的にも珍しい「ダイヤモンドクロス」を眺めた。
古町電停からは,煙を吐き出す姿を模した「坊っちゃん列車」に乗車。ガタゴトと揺られながら道後温泉へ向かう。昼食は「おいでん家」で真鯛の刺身をご飯に載せた愛媛伝統の「鯛めし」を堪能。午後は加藤嘉明が築いた松山城の天守に登り,城下町を見下ろす。夕刻は庚申庵史跡庭園で句聖・小林一茶の足跡を辿り,夜は「かめそば おでんの店 じゅん」を経て,道後温泉本館の湯に浸かった。木造建築のギシギシと鳴る階段,歴史の染み付いた湯殿に,旅情は最高潮に達した。
松山観光の拠点「道後ドミトリーホテル」
松山の夜を明かしたのは,道後温泉からほど近い「道後ドミトリーホテル」である。バックパッカーや一人旅の学生が多く集うこの宿は,無駄をそぎ落としたシンプルな空間が心地よい。
おすすめポイントと注意点
- おすすめ:道後温泉本館まで徒歩圏内という圧倒的な立地の良さと価格の安さ。
- 注意点:ドミトリー(相部屋)形式のため,音に敏感な方は耳栓の持参が必須。
格安で観光地に近く,学生旅には最適の選択肢である。
【3日目】雨の土讃線を南下:土佐の城下町と龍馬の足跡
少し寝坊した雨の朝,8時40分に松山駅を出発。2000系特急宇和海で内子へ立ち寄り,歴史的な街並みや内子座を短時間で散策する。宇和島からはキハ32形の単行キハに揺られ,予土線の清流を車窓に眺めながら窪川へ。そこから特急あしずりに乗り換え,15時に高知へ到着した。
とさでん交通の路面電車に乗り,「ひろめ市場」へ直行。熱気あふれる市場内でカツオのタタキを頬張る。その後,現存十二天守の一つである高知城へ。雨に濡れる石垣と天守の佇まいは静かな気品を放っていた。「龍馬の生まれたまち記念館」では,幕末の風雲児・坂本龍馬の生い立ちに思いを馳せる。
夜はとさでん交通を乗り継ぎ,桟橋通五丁目などの終点を目指して路線を乗りつぶす。夕食は「鍋焼きラーメン ちゅるちゅる」で,熱々の土鍋から立ち上る醤油の香りを楽しんだ。
高知駅至近の利便性「ホテルタウン駅前」
高知での宿は「ホテルタウン駅前」。翌朝の出発が早いため,駅からの距離を最優先して選んだビジネスホテルである。
おすすめポイントと注意点
- おすすめ:高知駅から徒歩数分という好立地。リーズナブルながらプライベート空間が確保できる。
- 注意点:建物にやや古さを感じるが,清潔に保たれており宿泊のみなら十分。
翌朝の早起きのハードルを下げるなら,駅近宿の一択だ。
【4日目】帰路:瀬戸大橋を渡り東海道を上る
最終日は快晴。6時発の特急南風に乗り込み,吉野川の峡谷を抜けて児島を目指す。途中の多度津で接続列車を眺め,瀬戸大橋を渡る際には,眼下に広がる瀬戸内海の多島美に息をのんだ。
8時10分,児島駅からは再び「青春18きっぷ」の出番だ。115系普通列車で岡山へ向かい,桃太郎像にあいさつをして東へ折り返す。相生・網干で乗り換え,225系新快速の転換クロスシートから車窓を流れる明石海峡大橋を眺めた。
米原,大垣,豊橋,浜松と細かく普通列車を乗り継ぐ。静止した車内で流れる時間に身を任せるのも,18きっぷ旅の醍醐味だ。静岡駅ホームの立ち食いうどんで腹を満たし,373系ホームライナー沼津,211系,そして熱海からE231系に乗車。19時過ぎ,夜の静寂に包まれた東京近郊へと戻ってきた。
旅の費用まとめ&持っていくべき厳選アイテム
今回の3泊4日四国周遊旅でかかった主な費用は以下の通りである。
| 項目 | 内容 | 費用(税込) |
| 交通費 | 青春18きっぷ(2回分換算) | 4,740円 |
| 交通費 | 学生限定春休み四国フリーきっぷ | 8,800円 |
| 交通費 | ジャンボフェリー乗船券 | 2,290円 |
| 交通費 | 市内電車一日乗車券等(とさでん・坊っちゃん) | 1,000円 |
| 宿泊費 | 2泊分(ドミトリー・ホテル) | 約7,500円 |
| 食費・雑費 | 浜松餃子,鯛めし,カツオのタタキ,温泉入浴料等 | 約10,000円 |
| 合計 | 約34,330円 |
持っていくべき厳選ガジェット・グッズ
- 大容量モバイルバッテリー:長時間列車に乗るため,コンセントがない車両での充電に必須。
- 機内持ち込みサイズの軽量スーツケース:階段の多い駅での乗り換えも苦にならない。
- 一眼レフ・ミラーレスカメラ:流れる車窓や歴史的建造物の情緒を余すことなく残すための相棒。
鉄路の旅へ出かけよう
青春18きっぷと地域限定のフリーきっぷを組み合わせることで,学生でもわずか3万円余りでこれほど濃密な歴史とグルメの旅が実現する。車窓から流れる風景の変化を楽しみ,各地の風土に触れる旅は,日常では味わえない深い充足感を与えてくれるはずだ。
次の休日は,時刻表を手に取って未知の街へ飛び出してみてはいかがだろうか。








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