本ページはプロモーションが含まれています
取材:2014年6月
はじめに:東京の夜,鉄路の旅の始まり
かつて,日本の夜には無数の夜行列車が走っていた。ブルートレインが次々と姿を消した2014年現在,東京から東海道を結ぶ最後の砦として君臨するのが,臨時快速「ムーンライトながら」である。
青春18きっぷが利用できるこの列車は,安価に,そしてどこまでも遠くへ行きたいと願う若者たちの聖地であった。当時高校生だった私は,有り金すべてを握りしめ,まだ見ぬ西国へと向かうため,夏の新宿駅に立っていた。
小田急線で小田原へ。18きっぷの「裏ワザ」移動
旅の始まりは,JRではなく小田急電鉄の新宿駅からである。
旅人の知恵:なぜ小田原スタートなのか?
「ムーンライトながら」は東京駅を23時10分に出発する。しかし,そこで青春18きっぷに入鋏(スタンプ)してしまうと,日付が変わるまでのわずか50分ほどのために,1日分(2,370円相当)を消費することになってしまう。
それを回避するための定番ルートが,「小田急線の急行で小田原駅まで先回りする」という方法である。小田急線の運賃は安く,新宿から小田原までわずか880円(※2014年当時の運賃)。小田原駅の到着は23時半過ぎ。ここで日付が変わるのを待ち,午前0時を過ぎてから「18きっぷ1日目」を開始するのが,貧乏旅行を極める高校生たちの鉄則であった。
小田急線の車窓から流れる東京の夜景は,次第に神奈川の深い闇へと吸い込まれていく。吊り革に掴まりながら,胸の高鳴りを抑えきれずにいた。
午前0時の小田原駅。国鉄型「185系」との邂逅
日付が変わり,小田原駅のホームに,白地に緑の斜めストライプを纏った185系電車が滑り込んできた。かつて特急「踊り子」などで活躍した国鉄型の名車である。
車内に入ると,独特のモーター音と,どこか懐かしい昭和の香りが鼻腔をくすぐった。座席はリクライニングシートであるが,現代の快適な夜行バスに比べれば,お世辞にも「熟睡できる」とは言えない。しかし,その不自由さこそが旅のスパイスであった。
窓の外は満天の星空,快晴である。列車が加速するたび,床下から「うなり」を上げる抵抗制御の爆音が車内に響く。通路を挟んだ向こう側では,同じように185系に揺られる同世代の旅人が,時刻表を愛おしそうに眺めていた。私たちは言葉を交わさずとも,「遠くへ行く」という目的だけで繋がっているような奇妙な連帯感を覚えた。
深夜2時、3時。列車は静岡の長い長い鉄路をひた走る。時折,貨物列車とすれ違う風圧で車体が大きく揺れる。眠気と興奮の狭間で見る車窓の闇は,息をのむほどに美しかった。
大垣の朝。そして「大垣ダッシュ」の喧騒
午前5時55分。終点の大垣駅(岐阜県)に到着した。
快晴の朝陽が,夜を徹して走ってきた185系の白い車体を眩しく照らす。しかし,余韻に浸る時間は一瞬たりともない。大垣駅では,乗客が一斉に次の米原行き普通列車へと走る,通称「大垣ダッシュ」が繰り広げられるからである。
わずかな座席を巡る,旅人たちの無言の戦い。私も高校生の体力を活かして跨線橋を駆け抜け,なんとか米原行きの座席を確保した。
米原駅でさらに北陸本線へと乗り換える。車窓は東海道の工業地帯から,瑞々しい緑が広がる近江の田園風景へと変わっていく。琵琶湖の東岸を北上する頃には,夜行明けの心地よい疲労感が全身を包んでいた。
旅の終着,敦賀駅へ。鉄路が繋ぐ歴史
午前8時過ぎ。列車は終着の敦賀駅(福井県)に滑り込んだ。
ホームに降り立つと,日本海側特有の少し湿り気を帯びた,しかし抜けるように爽やかな夏の風が頬を撫でた。
敦賀は,かつてウラジオストクへと結ぶ国際フェリーが発着し,ヨーロッパへと繋がる「東洋の港町」として栄えた歴史を持つ。駅前に出ると,かつてこの地を走った蒸気機関車や,敦賀港の歴史を伝えるモニュメントが旅人を迎えてくれる。
東京の喧騒から,小田急線,夜行列車,そして幾度もの乗り換えを経て,私はついに北陸の門戸へと辿り着いたのだ。
ネットで瞬時に情報が手に入り,新幹線で数時間で移動できる時代において,あえて夜の闇を泥臭く突き進む「ムーンライトながら」の旅は,非効率の極みかもしれない。しかし,あの185系の座席で過ごした一晩,そして大垣の眩しい朝陽は,私の青春の1ページとして,今も鮮烈な光を放ち続けている。
旅に役立つおすすめアイテム&サービス
「ムーンライトながら」のような長距離鈍行旅や,現代の夜行バス・電車の旅を快適にするための厳選アイテムです。次の旅の準備にいかがでしょうか。
快適な車内睡眠のために。コンパクトに畳めるネックピロー
長時間の座席夜行や移動でも首が痛くならない,バックパッカー必携のエアピローです。
スマホのバッテリー切れ対策に。大容量モバイルバッテリー
夜行列車内にはコンセントがないことが多いため,地図アプリや時刻表アプリを使う旅人には必須のアイテム。
鉄道旅のバイブル。全国の路線図と時刻を網羅
スマホが繋がりにくい山間部でも安心。パラパラと眺めるだけで旅情がそそられる一冊です。
お得に旅をしよう。宿の予約はお早めに!







コメント