【桜降る近代の記憶】春の上野公園と東京下町ノスタルジー

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取材:2014年4月

始まりは小さな公園の面影から――池之端児童遊園

春の陽気は,どこか人を遠くへ誘う力を持っている。2014年4月。進級したばかりの少し落ち着かない心を抱え,私は一人,千代田線に揺られて根津駅に降り立った。今回の旅の目的は,かつて教科書で見た東京の歴史の断片を,この目で確かめることである。

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駅から少し歩いたところに,「池之端児童遊園」という小さな公園がある。一見すると,どこにでもある近隣の遊び場だ。しかし,ここにはかつて都電(都電15系統)が走っていた記憶が,静かに保存されている。

歴史の記憶を留める場所
園内には,かつて東京の街を縦横無尽に駆け巡った都電「7500形」の車両が,そのままの姿で静態保存されている。

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緑色の車体に引かれた黄色い帯。かつて多くの庶民を乗せて走ったであろうその車両は,今ではすっかり子どもたちの遊具となり,静かに余生を過ごしていた。窓から差し込む春の光が,埃の舞う車内を優しく照らしている。昭和の賑わいが今もどこからか聞こえてきそうな,不思議な静寂がそこにはあった。

喧騒と爛漫の桜、そして維新の傑物――上野恩賜公園

池之端児童遊園を後にし,不忍池のきらめく水面を左手に眺めながら,緩やかな坂を登って上野恩賜公園へと向かう。

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公園内に一歩足を踏み入れると,先ほどまでの静けさが嘘のような熱気に包まれた。見上げれば,空を覆い尽くすほどの満開の桜。風が吹くたびに,淡いピンクの花びらが雪のように舞い散る。2014年の春も,上野は相変わらずの人出である。

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五感を刺激する露店の賑わい
通路の両脇にはびっしりと露店が並び,焼きそばやたこ焼きの香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。シートを広げて宴会を楽しむ大人たちの笑い声が,春のぬるい空気に溶けていく。

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西郷隆盛像との対面
人混みをかき分け,高台へと進む。そこに佇むのは,教科書で何度も目にした西郷隆盛の銅像である。浴衣姿に犬を連れたその姿は,東京の近代化をじっと見守ってきた威厳と,どこか親しみやすさを湛えていた。激動の幕末を生き抜いた男の視線の先には,現代の平和そのものの桜景色が広がっている。

レンガに刻まれた明治の息吹――万世橋

上野の山を降り,秋葉原方面へと南下する。電気街の喧騒を抜けた先,神田川に架かるのが「万世橋」である。

ここに佇むと,圧倒的な存在感を放つ赤レンガの高架橋が目に飛び込んでくる。旧万世橋駅の遺構だ。前年(2013年)に「マーチエキュート神田万世橋」としてリニューアルされたばかりのこの場所は,歴史と現代のカルチャーが見事に融合した空間に変貌を遂げていた。

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1912年(明治45年)に完成したというそのレンガ造りの高架橋を間近で見上げると,一つ一つのレンガが異なる表情を持っていることに気づく。高校生の私にとって,それは単なるお洒落な商業施設ではなく,明治という時代が確かにここに存在したという,動かぬ証拠のように思えた。川面に映る赤レンガの影が,ゆらゆらと時の流れを表現しているかのようであった。

首都高の影と,隠された日本の中心――日本橋川

さらに足を進め,日本橋エリアへと向かう。東京の,いや日本の道路の起点である「日本橋」に到着したとき,私は妙な胸のざわつきを覚えた。

見上げる空を,巨大なコンクリートの塊が遮っている。首都高速道路の高架である。

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1964年の東京オリンピック。突貫工事による首都高建設。日本橋の空を覆う。

日本の近代化と高度経済成長の象徴である首都高。しかしその代償として,江戸時代からの歴史を伝える日本橋の空は,今もなお灰色のコンクリートに覆われたままである。
橋の欄干に飾られた麒麟の像が,どこか窮屈そうに,それでも力強く翼を広げている。この調和と不調和が混ざり合った景色こそが,東京という街のリアルな歴史の積み重ねなのだと,強く実感させられる瞬間であった。

旅の終着,蘇った赤レンガの宮殿――東京駅丸の内駅舎

いよいよ旅も終盤である。ビル群の間を通り抜け,最後に辿り着いたのは東京駅丸の内側であった。

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目の前に広がったのは,圧倒的なスケールで聳え立つ,赤レンガの丸の内駅舎である。2012年に復原工事が完了し,大正創建当時の美しい姿を取り戻したその姿は,夕暮れ時の光を浴びて神々しいほどに輝いていた。

左右に配された美しいドーム,美しい意匠が施された窓枠。一人の高校生としてその前に立ったとき,自分がまるでタイムスリップしてしまったかのような錯覚に陥る。ドームの内部を見上げると,そこには鷲のレリーフや干支のレリーフが精緻に施されており,あまりの美しさにしばらく首が痛くなるのも忘れて見惚れてしまった。

東京という街は,常に新しいものを生み出しながらも,こうして過去の遺産を大切に受け継いでいる。
ポケットの中でスマートフォンの時計を見ると,もう時刻はお昼になろうとしていた。足の痛みも心地よく,私の初めての本格的な東京散策は,この美しい赤レンガの宮殿の前で幕を閉じたのである。

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