【LCCでゆく夜間飛行】夜の鉄路から天空の航路へ。南海ラピートとジェットスター,成田から京成アクセス特急で繋ぐ究極のコスパ旅

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取材:2014年1月

鉄の深海魚から,眠らない人工島へ。ラピートが運んだ夜の滑走路

濃紺の車体が,プラットホームの蛍光灯を浴びて妖しくきらめいていた。

2014年1月。冬休みの終わりを惜しむように,私は関西空港駅の改札へと歩を進めていた。旅の終わりを惜しむ私は,大阪・難波から南海電鉄の誇る空港特急「ラピートβ(ベータ)」に揺られてこの場所に到着したばかりであった。航空機のような丸い窓,レトロフューチャーな「鉄人28号」を彷彿とさせる大胆な先頭形状。その深海魚を思わせる独創的な空間から吐き出されると,目の前には,近未来の宇宙ステーションのような開放的な関西国際空港の空間が広がっていた。

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関西国際空港は,平成6年(1994年)に世界初の「完全人工島」として開港した,日本を代表する24時間運用可能な国際拠点空港である。

特に2010年代に入ってからの関空は,日本におけるLCC(格安航空会社)の聖地として劇的な変貌を遂げていた。新幹線や既存のレガシーキャリア(大手航空会社)の運賃が高嶺の花であった高校生の私にとって,わずか数千円の運賃で東京へと運んでくれるLCCの台頭は,まさに旅の概念を根底から覆す革命であった。私は Domestic(国内線出発)の文字が光る第1ターミナルビルへと向かった。

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■ 関西国際空港 探検メモ(2014年1月現在)
当時,ジェットスター・ジャパン(GK)の国内線は,関西空港駅直結の第1ターミナルビル2階の南側カウンターで搭乗手続きを行っていた。LCC専用の第2ターミナル(ピーチなどが使用)とは異なり,駅からの移動距離が短く,マクドナルドや各種お土産店,ダイニングエリアが充実しているため,出発前の時間を非常に有効に活用できるのが大きなメリットである。

搭乗手続きを済ませた私は,夜の帳が完全に下りたターミナルを少し探検することにした。
4階の国際線出発ロビーへとエスカレーターを上ると,そこにはレンゾ・ピアノ設計の流れるような大屋根(トラス構造)がどこまでも続いていた。世界各国へと旅立つ旅人たちのざわめき,異国の言語,お土産店の華やかな灯り。高校生の私は,その国際色豊かな熱気に圧倒されながらも,これから始まる自分自身の夜間飛行への期待に,胸の鼓動を激しく刻んでいた。

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漆黒の空へ,オレンジの矢が放たれる。GK208便の夜間巡航

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保安検査場を抜け,静まり返った搭乗ゲートへと向かう。
今夜,私を東京へと送り届けてくれるのは,ジェットスター・ジャパンの成田空港行き,GK208便である。ゲートのガラス越しに見えるのは,シャープなシルバーの車体に鮮やかなオレンジ色の星を戴いた「エアバスA320」型機。機内へと続くタラップを渡り,少し小ぶりだが機能的にまとめられた革張りシートの座席に身を沈める。

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午後8時過ぎ,定刻通りに機体は動き出した。
窓の外には,人工島の輪郭を縁取る誘導路の青や緑の光が,まるで宝石を撒き散らしたようにまたたいている。
「キーン」と高い金属音を響かせ,2基のCFM56エンジンが限界まで出力を上げると,強烈なG(重力)が私の身体をシートへと押し付けた。

次の瞬間,ふわりと浮遊感が走り,窓の外の関空の灯りが一気に遠ざかっていく。機体は漆黒の大阪湾を蹴り,漆黒の空へと飛び立った。

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機内モードに設定したスマホに表示される時計を見つめながら,私は暗闇の窓外を見つめ続けた。
高度約1万メートル。2014年現在,LCCの定着によって,日本の空はかつてないほど身近なものになっていた。ベルト着用サインが消えると,機内には静かな夜の時間が流れる。眼下を見下ろせば,太平洋の海岸線に沿って,名古屋や静岡といった都市の灯りが,まるで流れる銀河のようにオレンジ色にきらめいていた。新幹線の車窓からは決して見ることのできない,日本列島の巨大な夜景の骨組み。高校生の私は,ただただその神聖な美しさに圧倒され,言葉を失っていた。

霧の成田から,時速130キロの鉄路「アクセス特急」で東京へ

約1時間の短い,しかし濃密なフライトを終え,GK208便は関東の空の玄関口,成田空港へと滑り込んだ。
夜の風が吹き抜けるタラップを降り,ターミナルの長い通路を歩いてJR・京成電鉄の乗換駅へと向かう。到着したのは午後9時を回った頃。ここから東京の心臓部へと戻るため,私はもう一つの「平成のイノベーション」を利用することにした。京成電鉄の「アクセス特急(成田スカイアクセス線経由)」である。

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成田スカイアクセス線(成田空港線)は,平成22年(2010年)に開業した,東京と成田を最短結ぶ高速新線である。
それまでの京成本線経由に比べ,印旛日本医大駅から成田空港までの区間を最高時速130キロ(スカイライナーは160キロ)でカッ飛ばす,まさに新時代のアプローチ路線だ。

■ 成田スカイアクセス線 旅のミニ知識(2014年1月現在)
成田空港から都心へのアクセスといえば「京成スカイライナー」や「成田エクスプレス」といった有料特急が定番だが,高校生の一人旅やコスパ重視の旅人にとって,一般特急運賃(追加料金なし)で乗れる「アクセス特急」は最強の選択肢である。日暮里駅まで約1時間,1,200円という圧倒的な安さと速さを両立している。
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オレンジ色のラインと飛行機のイラストをまとった京成3050形のロングシートに腰掛ける。
成田空港駅を発車した列車は,成田ニュータウンを抜け,印旛沼の北側へと建設された高規格な一直線の線路を,すさまじい風切り音とともに疾走していく。窓の外には,街灯りの少ない北総の大地が闇の中に広がっていたが,千葉県から東京都内へと入るにつれ,車窓は徐々に無数の光の粒子が躍る,見慣れた大都会の夜景へと塗り替えられていった。

旅の終着。日暮里の跨線橋に響く,未来へのジョイント音

午後10時過ぎ。列車は終点の手前,JR各線への大動脈の乗換駅である「日暮里(にっぽり)駅」へと滑り込んだ。

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関西空港を夜に出て,雲の上を飛び越え,北総の原野を疾走して東京の東の拠点へ。
難波からの鉄路を繋いだ南海ラピート。
日本の空の距離を劇的に縮めたジェットスター。
そして,成田と都心を圧倒的な駿足で結んだ京成アクセス特急。
いくつもの交通機関がリレーのバトンを繋ぐようにして完成したこの夜間飛行は,高校生の私の拙い感性を心地よく揺さぶり,リュックサックの中に目に見えない確かな豊かさを満たしてくれた。

私は,山手線へと乗り換えるため,近未来的にリニューアルされた日暮里駅の広大なコンコースへと向かった。改札をくぐり,夜のホームへと下りる階段で,頭上の跨線橋から響く規則正しいレールの音を聴きながら,私は今日体験したジェットエンジンの圧倒的な推進力と,LCCの革新的な時代の息吹を,これから始まる自分の毎日の戦いへのお守りのように胸の奥でそっと反芻し続けたのである。

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