0_東京都

駅巡り

【消えゆく座席夜行】「ムーンライトながら」が紡ぐ,東京から北陸への長距離鈍行旅

本ページはプロモーションが含まれています取材:2014年7月はじめに:東京の夜,鉄路の旅の始まりかつて,日本の夜には無数の夜行列車が走っていた。ブルートレインが次々と姿を消した2014年現在,東京から東海道を結ぶ最後の砦として君臨するのが,臨時快速「ムーンライトながら」である。青春18きっぷが利用できるこの列車は,安価に,そしてどこまでも遠くへ行きたいと願う若者たちの聖地であった。当時高校生だった私は,有り金すべてを握りしめ,まだ見ぬ西国へと向かうため,夏の新宿駅に立っていた。小田急線で小田原へ。18きっぷの「裏ワザ」移動旅の始まりは,JRではなく小田急電鉄の新宿駅からである。旅人の知恵:なぜ小田原スタートなのか?「ムーンライトながら」は東京駅を23時10分に出発する。しかし,そこで青春18きっぷに入鋏(スタンプ)してしまうと,日付が変わるまでのわずか50分ほどのために,1日分(2,370円相当)を消費することになってしまう。それを回避するための定番ルートが,「小田急線の急行で小田原駅まで先回りする」という方法である。小田急線の運賃は安く,新宿から小田原までわずか880円(※2014年...[続く]
ローカル線の旅

【隅田川水上バス】時をかける水の路。初夏の隅田川クルーズ旅

本ページはプロモーションが含まれています取材:2014年6月陸の上を歩いているだけでは,東京という街の本当の輪郭は見えてこないのかもしれない。2014年6月。どこか遠くで夏の手真似が聞こえるような,陽光の眩しい昼下がり。私たちは浅草の吾妻橋の袂にいた。今回は,江戸の昔から物流と文化を支え続けてきた東京の母なる川,「隅田川」を水上バスで下る旅の記録である。高校生という少し背伸びをしたい季節の私たちが,船上から見つめた都市の過去と未来,そして水面(みなも)が織りなす情緒をここに書き残しておきたい。始まりは朱の架け橋。水上の特等席へ浅草のシンボル,鮮やかな朱塗りの吾妻橋。その下に滑り込むようにして,私たちが乗り込む水上バスは静かに待機していた。隅田川に浮かぶ,非日常の入り口乗船口を抜け,船内に一歩足を踏み入れると,ガラス越しに切り取られた世界は一気に低くなる。目線が水面に近づくだけで,見慣れた東京の風景が,まるで異国の街並みのように新鮮に映るから不思議である。昼過ぎの太陽は容赦なく照りつけ,川面を無数のダイヤモンドを撒き散らしたかのように煌めかせていた。ゴゴゴ,と低く重厚なエンジン音が響き,...[続く]
0_街並み

【東京タイムトラベル】伝統と未来が交差する街。スカイツリーから浅草への日帰りノスタルジー

本ページはプロモーションが含まれています取材:2014年6月東京という街は,過去と未来が奇妙なバランスで同居している。2014年の初夏,6月の風はどこか少し汗ばむ気配を孕みながらも,見上げるほどの青空を連れて私たちの前に現れた。今回は,まだ真新しさを残す電波塔から,江戸の息吹を残す古刹へと歩を進めた,ある日の旅の記録である。高校生の視点から切り取った,新旧の東京が織りなすコントラストを,情景とともに書き残しておきたい。眩惑のタワーと,初夏の光を集める街東京スカイツリータウンに降り立ったとき,最初に出迎えてくれたのは,網膜を刺すような圧倒的な白だった。圧倒的な垂直の美。見上げる視線の先,雲一つない青空に向かって,東京スカイツリーは一本の巨大な光の針のようにそびえ立っていた。伝統的な日本建築の「反り」や「起り」を意識したというそのシルエットは,ただの鉄塊ではない。どこか有機的な美しさを湛えている。足元から頂点へと視線を滑らせるだけで,首の骨がきしむような感覚と同時に,目眩にも似た高揚感が胸を突いた。賑わいのモールを抜けて。まだ午前中の澄んだ空気の中,東京ソラマチの内部へと足を向ける。ガラス...[続く]
0_街並み

【桜降る近代の記憶】春の上野公園と東京下町ノスタルジー

本ページはプロモーションが含まれています取材:2014年4月始まりは小さな公園の面影から――池之端児童遊園春の陽気は,どこか人を遠くへ誘う力を持っている。2014年4月。進級したばかりの少し落ち着かない心を抱え,私は一人,千代田線に揺られて根津駅に降り立った。今回の旅の目的は,かつて教科書で見た東京の歴史の断片を,この目で確かめることである。駅から少し歩いたところに,「池之端児童遊園」という小さな公園がある。一見すると,どこにでもある近隣の遊び場だ。しかし,ここにはかつて都電(都電15系統)が走っていた記憶が,静かに保存されている。歴史の記憶を留める場所園内には,かつて東京の街を縦横無尽に駆け巡った都電「7500形」の車両が,そのままの姿で静態保存されている。緑色の車体に引かれた黄色い帯。かつて多くの庶民を乗せて走ったであろうその車両は,今ではすっかり子どもたちの遊具となり,静かに余生を過ごしていた。窓から差し込む春の光が,埃の舞う車内を優しく照らしている。昭和の賑わいが今もどこからか聞こえてきそうな,不思議な静寂がそこにはあった。喧騒と爛漫の桜、そして維新の傑物――上野恩賜公園池之端...[続く]
駅巡り

【最後の旅路】青い客車が紡ぐ,夜行列車の終着駅。東北から上野まで駆け抜けた寝台特急「あけぼの」B寝台の完全乗車記録

本ページはプロモーションが含まれています取材:2014年3月漆黒のホーム,旅情の青。歴史の境界線で待つ「あけぼの」東北の夜の底から,冷たい風が吹き抜けていく。2014年3月。定期運行の廃止という運命のダイヤ改正をわずか数日後に控えた春休み,私はJR秋田駅のプラットホームに立っていた。高校生の私にとって,これから人生最初で最後になるかもしれない,ある特別な列車を待っていた。その名は寝台特急「あけぼの」。上野と青森を,羽越本線・奥羽本線経由で結び続けた,日本の一時代を象徴する伝統のブルートレインである。寝台特急「あけぼの」は,昭和45(1970)年の運行開始以来,東京と北東北を結ぶ大動脈として,出稼ぎの労働者やビジネスマン,そして多くの旅人を運び続けてきた。しかし,新幹線網の拡大や夜行高速バスの台頭,そして車両の老朽化には抗えず,2014年3月15日のダイヤ改正をもって、ついにその長い定期運行の歴史に幕を下ろすことが決定していた。遠くの闇から「ゴォー……」という重厚な地響きとともに,青い客車の列を従えた電気機関車が滑り込んでくる。車体に掲げられた「あけぼの」のヘッドマークが,ホームに浮かび...[続く]
0_街並み

【100年に一度の大改造】消えゆく昭和の営みと,胎動する未来の街。渋谷駅大工事の全貌と消えゆく名車たちを巡る紀行

本ページはプロモーションが含まれています取材:2014年1月宙に浮く重機,解体される鉄路。渋谷ヒカリエから見下ろす,変革の咆哮冬の抜けるような快晴の青空が,ガラス一面に広がっていた。2014年1月。張り詰めた寒気のなか,私は渋谷駅東口にそびえ立つ新たなランドマーク,「渋谷ヒカリエ」の11階スカイロビーに立っていた。私は,いま,日本の歴史上でも類を見ないほど巨大な「変革」の渦中にあるこの街の鼓動を,この目で確かめたいと願っていた。眼下に広がるのは,さながら巨大な建築模型であり,同時に,絶え間なく変化し続ける生きた生き物の巣窟のようでもあった。前年の平成25年(2013年)3月,東急東横線の渋谷駅は,長年親しまれた高架ホームから地下へとその姿を消し,東京メトロ副都心線との相互直通運転を開始した。その大転換から約1年。地上に残されたかつての鉄路と,これからの未来を背負う新駅の建設現場は,まさにカオスそのものの美しさを放っていた。ロビーの窓越しに見下ろす渋谷駅周辺は,無数のクレーンが幾重にも交差し,巨大な鉄骨が縦横無尽に組み上げられている。かつて東横線の電車が滑り込んでいたカマボコ型の屋根は,...[続く]
0_商店街

【合格祈願の梅香る坂から,夕暮れのアメ横へ】湯島天神の静寂と上野・御徒町の圧倒的エネルギー

本ページはプロモーションが含まれています取材:2014年1月祈りの結び目、そして日常の熱狂へ。冬の東京の二つの顔を巡る冬の張り詰めた寒気が,都会の喧騒をどこか遠くへ押しやっている。2014年1月。受験シーズンが本格化する独特の緊張感のなか,私は東京メトロ千代田線の湯島駅に降り立った。高校生の私は,これから自分の未来を切り拓くための神聖な丘へと向かう。目指すは,学問の神様として名高い「湯島天神(湯島天満宮)」。駅から急な「男坂」の石段を上るにつれ,大都会の車の音は静かに遮られ,代わりに凛とした清浄な空気が身を包み始めた。湯島天神は,雄略天皇2年(458年)に天之手力雄命(あめのたぢからをのみこと)を祀って創建されたと伝えられる古社である。その後,正平10年(1355年)に菅原道真公(天神様)が勧請され,以来,江戸時代から現代に至るまで,数多くの学者や文人,そして受験生たちの心の拠り所として信仰を集め続けてきた。境内へ一歩足を踏み入れると,冷たい風のなかに,ほんのりと甘く優しい香りが漂っているのが分かった。境内に植えられた約300本の梅の木々が,春の訪れを待ちきれずに,いくつかの小さな蕾を...[続く]