【日本海夜行便】新日本海フェリーで新潟から秋田へ!夜行フェリーで行く夏の東北・鈍行旅

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取材:2013年7月

はじめに:夜の海に惹かれて

高校生の夏休みは,いつも少しだけ無謀で,それでいてひどく退屈なものである。
手元にあるのは,いつもは部活の道具を入れているリュックサックと,いくばくかの小遣いだけだ。普通列車を乗り継ぐだけの旅も悪くはないが,どこか冒険の味が足りない。そう考えていたとき,地図の上の日本海を縦断する一条の航路が目に留まった。

新日本海フェリー。

福井県の敦賀から新潟・秋田、そして北海道の苫小牧へと至る大型客船である。その途中わずか一区間,新潟から秋田までの夜行航路。それこそが,今回の旅にふさわしかった。私は未知の船旅へと歩みを進めた。

夕闇の新潟駅から港へ、そして乗船

旅の始まりはJR新潟駅である。北陸新幹線開通前夜の脇野田駅を訪れ,485系「快速くびき野」に乗車し新潟駅に到着した。

【駅旅】消えゆく地上駅・脇野田。北陸新幹線開業前夜,変わりゆく信越本線の記憶を歩く
本ページはプロモーションが含まれています取材:2013年7月2015年春の足音と、消えゆく「日常」2013年 7月。夏の瑞々しい青葉が,どこか湿気を含んだ風に揺れている。いま,鉄道ファンの熱い視線が注がれている場所がある。2015年春に開業を控えた北陸新幹線(長野〜金沢間)の沿線だ。新しい時代の幕開けは,同時に,古き良き景色の終焉を意味する。新幹線がもたらす「速さ」と引き換えに,私たちは何を失ってしまうのだろう。そんな感傷に背中を押され,私は列車に乗り込んだ。目指すは,信越本線の小さな木造駅舎――「脇野田(わきのだ)駅」。新幹線「上越妙高駅」の建設に伴い,ルートごと移設され,その姿を消すことが決まっている駅だ。直江津から普通列車に揺られ,最後は今や貴重となった国鉄型特急車両で走る「快速くびき野」で新潟へ。変わりゆく新潟の鉄路の「今」を焼き付ける,短い旅の記録をお届けする。直江津駅から始まる旅。交差する過去と未来旅の始まりは,かつて日本海側の交通の要衝として栄えた直江津(なおえつ)駅。信越本線と北陸本線が交わるこの巨大なターミナル駅も,新幹線が開業すれば,並行在来線としてJRから第三セク…[続く]

万代口のバスターミナルへと向かう。独特のスイッチバック式バス乗り場から,新潟交通(バス)に乗り込む。目指すは「新潟フェリーターミナル」である。運賃は200円、およそ15分ほどの短いバス旅だ。

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フェリーターミナル最寄りのバス停で降りると,暗闇の中目の前にそびえ立つフェリーターミナルが現れた。

ターミナルで予約名を告げ,しばし乗船時間まで待合所で時間を潰す。

【新潟~秋田航路・基本情報(2013年7月当時)】
■運航ダイヤ:新潟港 23:05発 ~ 秋田港 翌朝 05:40着
■利用クラス:ツーリストB(雑魚寝ではない、セパレートタイプのベッド)
■運賃(片道):4,500円(※学生割引利用でさらに2割引き)

高校生にとって,この「学割」の破壊力は凄まじい。窓口で発券された乗車券を手にすると,まるで大人の仲間入りを果たしたかのような高揚感が胸を突き上げてきた。

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乗船開始は22時45分。高校生なら普通であれば補導されてしまう時間帯だ。ただ今日は特別な旅行の日。今日くらいは見逃してくれないかな。

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乗船時間となると,乗客たちは通路を渡り,船内へ一歩足を踏み入れる。そこはホテルのロビーさながらの吹き抜けの空間であった。

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私の城となる「ツーリストB」は,上下2段の階段式ベッドである。カーテンを閉めれば,完全に自分だけの秘密基地が完成する。荷物を置いて身軽になると,私はすぐに海を望めるデッキへと向かった。

日本海の夜に包まれて

23時05分。重低音の汽笛が夜の静寂を切り裂いた。
船体がゆっくりと岸壁を離れていく。新潟の街明かりが,遠ざかるにつれてきらきらと小さくなっていく。

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デッキに出ると,遮るもののない夏の夜風が全身を包み込んだ。
視線を海に向ければ,そこにはただ圧倒的な「無」の黒が広がっている。時折,遠くに他の船の灯りや,沿岸の街の瞬きが見えるだけだ。スマートフォンをポケットから取り出してみるが,画面の隅の電波マークはとうに「圏外」を示していた。

「日常からの完全な途絶」

ネットと繋がっていない時間が,これほど心地よいものだとは知らなかった。

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船内には大浴場もある。大海原を窓の外に望みながら(夜なので何も見えないが),湯船に浸かって波の揺らぎを感じる時間は至福であった。

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風呂上がり,売店で買った冷たい飲み物をロビーで啜っていると,船体が大きくうねるように揺れた。自分が今,巨大な鉄の塊に乗って,夜の日本海を北上しているという事実が,妙に現実味を帯びて迫ってくる。

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ベッドに戻り,心地よいエンジンの微振動に身を委ねていると,驚くほど深い眠りが私を捉えた。

東の空が白む頃 秋田港から土崎駅への朝歩き

「おはようございます。当船はまもなく,秋田港に到着いたします……」

船内アナウンスで目を覚ましたのは,午前5時過ぎのことであった。カーテンを開けると,窓の向こうには新しい一日を告げる太陽の光が私を差していた。

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5時40分,定刻通りに秋田港へ接岸。
タラップを降りると,早朝の秋田の空気はひんやりと冷たく,そしてどこか磯の香りが強かった。

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ここからが,この旅のもう一つの踏ん張りどころである。
通常であればバスを利用するところだが,高校生の財布事情を鑑み,私は最寄りのJR奥羽本線・土崎(つちざき)駅まで歩くことを選択した。

港から土崎駅までは,距離にして約2キロメートル。時間にして25分ほどの道のりである。
まだ誰も起きていないような,静まり返った臨海地域の道路を,リュックの重みを感じながら一歩一歩進む。

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途中,秋田港線なる線路が目に入った。土崎はかつて北前船の寄港地として栄えた港町だ。その歴史の陰影が,朝の斜光によって色濃く浮かび上がっているようだった。

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やがて見えてきた土崎駅は,木造風の駅舎であった。
ここから奥羽本線の普通列車(701系電車)に乗り込む。わずか7分ほどの乗車で,列車は終点の秋田駅へと滑り込んだ。

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秋田市民市場の熱気と朝食

午前8時前の秋田駅。私の目的地はここから徒歩5分ほどの場所にある。

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「秋田市民市場」である。

「秋田の台所」と呼ばれるこの市場は,一歩中に入ると,海産物の香りに身体中が包まれた。

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ずらりと並ぶ店舗には,獲れたての鮮魚,じゅんさい、いぶりがっこ、そしてみずみずしい夏野菜が山積みにされている。市場の人々の威勢のいい秋田弁が飛び交い,私の空腹を激しく刺激した。

市場内にある食堂,あるいは惣菜屋で白飯を買い,目の前で捌いてもらった筋子やマグロを乗せて食べる。
口に運んだ瞬間に広がる濃厚な海の味と,炊き立ての米の甘み。五臓六腑に染み渡るとは,まさにこのことだ。一晩を船の上で過ごし,朝の港町を歩き抜いた身体に,最高のエネルギーが満ちていくのを感じた。

結び:フェリー旅が教えてくれたこと

秋田市民市場を後にする頃には,街はすっかりいつもの一日を始めていた。

新潟から秋田へ。高速バスや特急などを使えば座席で過ごすだけで誰もが簡単に移動することはできる。しかし,夜行フェリーという手段を選び,あえて時間をかけて移動したことで,私は「地球」を知ることができた。夜の海の深さ、朝の空気の冷たさ、そして歩いた後に食べるご飯の美味しさ。それらすべてが,効率性だけを求める現代の旅では決して味わえない,贅沢な経験であった。

もしあなたも,日常の退屈に押しつぶされそうになっているなら,時刻表を開いてみてほしい。
そこには,夜の海へと誘う,もう一つの旅路が必ず待っているはずだ。

今すぐ旅立ちたくなったあなたへ

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