2020-05

寺社仏閣

【静寂の京都】早朝の伏見稲荷大社へ。千本鳥居が魅せる異界への誘いと,冬の記憶

本ページはプロモーションが含まれています取材:2014年1月朱の迷宮に迷い込む。冬の朝,伏見稲荷大社で出会った異界の静寂冬の朝の空気は,刃物のように鋭く,そしてどこまでも透明である。新しい一日がその訪れを告げた午前7時過ぎ,私は京阪電車の伏見稲荷駅に降り立った。急行や快速急行が通り過ぎるこの駅は,早朝ということもあって,吐き出す乗客の数もまばらである。改札を出ると,肌を刺すような京都の底冷えが,高校生の引き締まった身体を容赦なく包み込んだ。通学カバンではなく,いささか大振りなリュックサックを背負った私は,まだ眠りから覚めやらぬ門前町へと歩みを進めた。普段なら観光客でごった返す表参道も,この時間だけは静寂に支配されている。大鳥居をくぐり,本殿へと向かう。伏見稲荷大社は,全国に約3万社あるとされる稲荷神社の総本宮である。その歴史は古く,和銅4年(711年)に伊奈利山(いなりやま)の三つの峰に神様が降り立ったことが始まりと伝わる。秦氏(はたうじ)という渡来系氏族が深く関わっており,彼らの高い農業技術や金属加工技術が,この地の繁栄の基礎となった。五穀豊穣、商売繁盛の神として信仰を集めるこの聖地...[続く]